オペラ勧進「歌と芸術よもやま話」
2018年 04月 21日
オペラ勧進 No.117 2018年4月20日(金)
今月の一言 日経新聞夕刊 「こころの玉手箱」から
特定非営利活動法人オペラ彩 和田タカ子
「時々牛丼を食べに行く。食べながら恩師の言葉を思い出す」今月18日、「こころの玉手箱」に寄せられた、脚本家竹山洋さんの書き出しの文です。26歳で脚本家になった竹山さんですが、全く売れず、辞めようと思っていたときに、「助手をやりなさい、地力をつけろ」と、ドラマのディレクターから高岡尚平氏を紹介され、再出発を期します。竹山さんは見習として、内弟子のような生活をされていたようです。
寒い冬の日。「今日はご馳走してやる。」と師に言われ、豪華な食事を想像しながら駅の方に歩いて行く師の後をついて行った竹山さん。ところが入ったのは牛丼屋。
(なんだ‥‥牛丼かよ、ご馳走が牛丼か)私は牛丼に卵を載せて唐辛子を
振りかけ紅ショウガを入れてぐちゃぐちゃにかき混ぜてガツガツ食った。
その時師が「君」と静かな声。「こういう物をご馳走だと思えない人間は
脚本家にはなれないよ」私は泣いた。何か仏に言われたような気がした。
嗚咽しながら牛丼を食べた。
ここまで読んで、私は竹山さんと一緒に泣いていました。「深夜、書けなくなると一人で牛丼を食べに行き、師の声を思い出して泣きながら食う」という竹山さん。音楽を志す者たちよ、忘れないで欲しい。大切なものを失う危険性に気付かず、消えていく人が多いのも、残念ながら現実なのだから。
# by operasai | 2018-04-21 11:50 | オペラ勧進