オペラ勧進「歌と芸術よもやま話」
2018年 01月 22日
オペラ勧進 No.114 2018年1月19日(金)
今月の一言 公演が終わって
特定非営利活動法人オペラ彩 和田タカ子
「トゥーランドット」が終わってしばらくの間、「今日は本番、行かなきゃ! …あ~、終わったんだった」、こんな朝が続きました。私の中に過度の重圧があった訳ではありませんし、やり残した後悔がある訳でもありません。「トゥーランドット」が体の中にしみついてしまっていたのかもしれません。
日経新聞「私の履歴書」に草笛光子さんがミュージカルとの出会いについて書いておられます。ニューヨークで観た「ラ・マンチャの男」に魅せられ、奔走して念願の日本での上演が決まって喜んだのも束の間、発表になったアルサンドラ役はトリプルキャスト。稽古は他の役の人の三分の一。本番が始まれば否応なしに他の人と比べられる、自分だけが後れているのではないか。重圧から「もうこの世にいたくない」と思い詰めて街を徘徊した当時の心境が綴られています。
現在は1970年代とは違って、オペラもミュージカルも公演回数が多くなり、歌い手の出番は格段に増えています。稽古回数を増やすことも厳しく、出演者を揃えての稽古もやりにくくなっています。そんな時代にあって、信念を曲げずに稽古を重ねられたことは望外の幸せだったのではないか、そう思うこの頃です。
by operasai | 2018-01-22 01:29 | オペラ勧進